保険と投資を分けるべき理由
~“なんでもセット”が一番ムダになることも~
◆ 「保険で貯める」は本当に安心?
「保険も入りたいし、どうせなら貯金にもなればいい」
──そんな思いから、“貯蓄型保険”や“変額保険”を選ぶ人は少なくありません。
たしかに、保障と貯蓄をまとめるのは一見スマートに見えます。
でも、実際の家計相談では、この“なんでもセット”がいちばん後悔されやすいんです。
理由はシンプル。
「保障」と「運用」では、目的も性質もまったく違うからです。
◆ 保険=“守る”お金、投資=“育てる”お金
保険の目的は、万が一のときに家族を守ること。
投資の目的は、将来に向けてお金を育てること。
どちらも大切ですが、
- 保険は「リスクに備える」ための支出
- 投資は「将来のリターンを得る」ための資産形成
というように、使うタイミングも、目的も正反対です。
たとえば、「医療保険」と「投資信託」を同じ感覚で考えてしまうと、
どちらも中途半端になってしまいます。
◆ 具体例:35歳・共働き夫婦のケース
Aさんご夫婦は、月3万円の「貯蓄型保険」に加入。
“老後のためにもなる”と説明されて始めたものの、
実際は月1万円が保障費、2万円が運用部分に使われていました。
10年後、ライフプランの変化で見直しを考えたとき──
「解約すると元本割れ」「保険料が高くて続けにくい」
という壁にぶつかりました。
もし最初から、
- 保険:月1万円(定期保険)
- 投資:月2万円(つみたてNISA)
に分けていたら、同じ支出でも自由度はもっと高かったはず。
“セット商品”の中に閉じ込めてしまうと、あとから動かせないのです。
◆ 一度混ぜると「やめにくくなる」
貯蓄型保険や外貨建て保険の最大のデメリットは、途中でやめにくいこと。
途中解約すると、手数料や解約控除で元本割れになるケースがほとんど。
しかも、運用成績が悪い時期に解約すれば、
「保障も失い、資産も減る」という二重のリスクを抱えます。
FPとしての本音を言えば、
「保険は“もしも”に備える道具、投資は“いつか”に備える道具」
同じ箱に入れてしまうと、どちらの良さも薄れてしまうんです。
◆ “分ける”ことが自由を守る
保険と投資を分けておくと、こんなメリットがあります👇
- ライフスタイルが変わっても柔軟に見直せる
- 貯蓄を投資に回す・一時停止するなど、自由に調整できる
- 保険料と運用コストを別々に把握できる
お金を「使う」「守る」「増やす」を整理すると、
どんな時期でも家計に“余白”が生まれます。
そしてその余白こそが、家計の安心につながります。
◆ FPからのひとこと
「保険で増やしたい」と思う気持ちは、間違いではありません。
でも、複雑な商品に頼るよりも、仕組みを分けてシンプルに管理する方が、結果的にお金が貯まります。
お金は“分ける”ことで守れる。
守る力と育てる力を、別々に磨いていきましょう。


