医療保険は本当に必要?
~公的保障とのバランスを考える~
◆ 「病気になったら困るから」と思って入ったけど
誰もが一度は勧められる医療保険。
「入っておけば安心」と言われると、つい契約してしまいますよね。
でも実際にFP相談をしてみると、
医療・がん・共済・特約など、似たような保障が重なっているケースが多いんです。
そして、冷静に見てみると
“すでに公的制度でかなり守られている”ことに気づく方がほとんどです。
◆ 公的医療制度はここまで手厚い
日本の医療制度は、世界的に見ても充実しています。
高額療養費制度
1か月の医療費が高額になっても、年収約500万円の人で自己負担は月約8〜9万円まで。
それ以上は払い戻されます。
付加給付(会社員・公務員)
健康保険組合によっては、さらに上限を引き下げ、実質2〜3万円の自己負担で済む制度もあります。
傷病手当金(会社員・公務員)
病気やケガで休職したとき、最長1年半まで給与の約3分の2を受け取れます。
医療費控除
年間10万円を超える医療費は、確定申告で税金が一部戻ります。
こうした制度を知っていれば、
民間の医療保険に頼らなくても多くの医療費リスクを現金でまかなうことが可能です。
◆ 一般的な入院なら貯蓄で十分まかなえる
FPの目安では、生活費とは別に100〜150万円の貯蓄があれば、
多くの入院・手術費用に対応できます。
内訳としては👇
- 高額療養費の上限:約9万円
- 差額ベッド代・食費など:10〜20万円
- 雑費・交通費など:数万円
1回あたり30万円前後を想定しておけば安心です。
5回分ほどを備える=100〜150万円、という考え方になります。
◆ がんの場合は“長期戦”を想定する
ただし、がんだけは話が別。
入院よりも、その後の通院治療・収入減少の方が大きなリスクです。
治療期間は平均で約2〜3年。
手術・抗がん剤・放射線などを続けながら通院するケースが多く、
その間、働き方をセーブしたり休職することもあります。
実際の自己負担をみると、
- 医療費の自己負担(高額療養費適用後):月8〜9万円
- 通院交通費・薬代・生活費減少分など:月10〜15万円
→ 合計で月20万円前後のキャッシュ流出になることも。
3年間続くと、およそ 300〜400万円程度の備えが現実的な目安です。
現金+投資+がん保険の給付金など、複数の手段でリスク分散するのが理想です。
| リスクの種類 | 備え方 | 目安額 |
|---|---|---|
| 一般的な病気・ケガ | 現金でカバー | 100〜150万円 |
| 長期治療(がんなど) | 現金+投資+保険 | 300〜400万円 |
医療保険は、「公的保障で足りない部分」を補うピンポイントな設計が最も効率的です。
なんとなく不安だからといって、月1万円以上払うのはもったいない。
◆ FPからのひとこと
医療保険は、“安心”のための道具です。
でも、**「どこまでが公的で守られるのか」**を知らないまま加入している人が多いのが現実。
まずは、
✔ 高額療養費制度
✔ 付加給付の有無
✔ 貯蓄額(100〜150万円)
✔ がん治療への備え(300〜400万円)
を数字で見える化してみましょう。
理解して備えることが、いちばんの安心になります。


