外貨建て保険の注意点
~「利回りが高い」だけで選ぶと危険~
◆ 「ドルで運用するとおトクですよ」と言われて
銀行や保険会社で、こんな説明を受けたことはありませんか?
「円より金利が高いので、ドル建てならお金が増えますよ」
「今の為替レートならお得です」
たしかに、米ドルや豪ドルなどの外貨は、日本より金利が高い傾向があります。
でも、その裏には為替リスクという落とし穴があります。
「なんとなく良さそう」で入ると、思っていたよりも手元に残るお金が少ない…というケースが本当に多いんです。
◆ 為替リスクって、つまりどういうこと?
たとえば、1ドル=100円の時に10,000ドルの外貨建て保険に加入したとします。
その後、解約時に1ドル=90円になっていたら、
円換算では10%のマイナスになります。
運用がうまくいっていても、為替で損をすることもある。
これが外貨建て保険の一番の注意点です。
逆に、円安になればプラスになる可能性もありますが、
「為替で増減する」という不確定要素を理解していないと危険です。
◆ 実際の相談例
40代の女性Bさん。
10年前に「ドル建て終身保険」を契約しました。
契約時は1ドル=95円。
2025年現在は1ドル=150円前後。
運用成績も悪くなく、円換算では増えて見える状態です。
でも、もし将来円高(たとえば1ドル=110円)に戻った場合、
今よりも20%以上価値が下がる可能性があります。
つまり、「今は得をしているように見えても、出口でどうなるかは分からない」。
これが外貨建て商品の一番の怖さです。
◆ もうひとつの見落とし「為替手数料」
外貨建て保険では、
保険料を払うとき・受け取るときに為替手数料がかかります。
一般的に1ドルあたり往復で約2円〜3円。
10,000ドルだと、それだけで2〜3万円のコスト。
さらに、保険の中では「運用コスト」「死亡保障のコスト」なども引かれており、
結果的に実質利回りは年1%台になることも珍しくありません。
「ドル建て=高利回り」とは限らないんです。
| 向いている人 | 向いていない人 |
|---|---|
| 為替の変動を理解している | 元本割れを絶対に避けたい |
| 長期で持ち続けられる(10年以上) | 数年以内に使う予定がある |
| 外貨を資産の一部として持ちたい | すべてを円で管理したい |
外貨建て保険は、外貨運用+保険+長期前提の人向け。
短期で利益を狙う人には不向きです。
◆ FPからのひとこと
外貨建て保険は、「複雑なのに説明が短い」商品です。
担当者の言葉をそのまま信じる前に、“リスクの中身”を自分の言葉で説明できるかを考えてみてください。
もし「よく分からないけど利回りが良さそう」で契約したなら、
一度見直しても遅くありません。
大切なのは、「増えるかどうか」より「リスクを取る意味があるか」。
お金は増やすより、守ることから始まります。


